3歳の娘との映画鑑賞記録 ~風人日記~

最近は娘と一緒に映画を観ることが多いので、感想だけでなく、そのときの娘の様子なども記録していきます。 子供にどんな映画をみせたらいいかの情報も募集中! 子供が生まれる前の感想もそのまま残してあります。

 考えれば考えるほどその完成度の高さに唸らせられる。意味のない描写は一つもないし、構成にも隙がない。完璧という表現をしてもいいくらいだ。
 前半と後半の落差も意図的だろう。「業」を描いた作品と言っても結局ハッピーエンドなのだろうと思わせる前半の展開。ヒロインはけなげな女性、不幸になっていいはずがない。前世がどうのこうのという話が出てくるが、ところどころに笑えるシーンもあるし、主人公は頼りになりそうだ。宣伝コピーにも「坊主、マッスルでカルマを断つ」とあるし、安心、安心。かすかな不安を感じつつも、確かな根拠もなく大丈夫と安心する。人生と同じだ。前半はいろいろな説明をしながらも、こういう心理状態を作り出すために「お気楽B級ホンコンムービー」を装っている。しかし、不幸は突然やってくる。望む望まないに関わらず(望む人もいないと思うが…)。これがもし最初から深刻かつ高尚な雰囲気だったら身構えてしまうだろう。観客にとって自分たちとは違う世界の物語になってしまう。結果「復讐をするかしないか」という問いかけもぼやけてしまうことになる。状況や主人公が特殊なだけで「自分なら迷わず復讐する」という感想になってしまいかねない。あくまで安心しているところに「突然やって来る不幸」である必要があるのだ。
  見たくないようなシーンもたしかにあるが、受け入れ難いことを受け入れることを表現するためにはあのくらいの描写は必要だろう。ヒロインはこんなにもけなげなのに報われないことも、人生の理不尽さとして理解すべき。現実には必ずしも「頑張れば報われる」わけではない。頑張っても報われないことはもちろん、努力が裏目に出ることもある(この映画ではそれを前世の悪行が原因と説明する)。
 理不尽な不幸にさらされたとしてもそれを受け入れる。そして報われることは期待できなくてもなお「己の行いを改めよ」というのがこの映画のテーマである。
 そして意味があるのか?と言われることの多い筋肉スーツ。あの筋肉は「力」の象徴である。カルマを断つのは「力」では決してなく、むしろ「力」を捨てる勇気こそが重要なのだ。(だから、この映画の宣伝コピーは大きなフェイクと言える。)これがわかれば筋肉が作り物というのも、力の虚構性を意味することもわかるだろう。あの筋肉ムキムキ姿をみて、笑ってしまうという感覚は実は正しい。
 内容の重さからそう何度も繰り返し観賞できる映画ではないが、奇跡のような大傑作。

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*amazonのレビューに似たような文章がありますが、私の文章です。パクリではありません…笑

ヒーロー・ネバー・ダイ~真心英雄~

 映画史上おそらく最も格好よく立ちションを描いてみせた作品。

 ジョニー・トー監督、レオン・ライとラウ・チンワンが共演。
 ジョニー・トーは『インファナル・アフェア』主演3人衆(アンディ、トニー、レオン)それぞれととラウ・チンワンを共演させてノワール作品を撮っているが、その中でも一番好きな作品。3人衆の中ではレオン・ライって一番ぬぼーっとしててアクション映画向きじゃないかなと思ってたのに、見事に殺し屋を演じてみせた。ラウ・チンワンは笑っちゃうような服装をしているのに、妙に格好よい。

 対立する関係にありながら絆を感じあう男二人、ラストの殴りこみ、スローモーションを効果的に使った美しくも壮絶な銃撃戦などなどの要素はジョニー・トー作品の中で最もジョン・ウー的なものを感じさせる。93年のジョン・ウー渡米、そして95年のチョウ・ユンファ渡米後、香港ノワールはどうなるのかと心配したが、これを観て無問題!と確信したものだ。ただしジョン・ウーとの違いもはっきりとある。たとえば女をちゃんと描くこと。たとえば立ちションをちゃんと描くこと(笑)。つまりジョン・ウーは格好いいことを極めて格好よく描いてみせたが、ジョニー・トーはあえて格好悪いことを選んできてそれをびっくりするほど格好よく描くのだ。男同士の絆確認もコインでのワイングラス壊し合いと子供っぽい。だけどしびれる!
 そして女の描き方。香港のノワールもので女が大きく描かれることはめったにないが、この作品では主人公二人の彼女がどちらも重要な役割を担っている。一方は下半身不随になり女が身体で稼いだ金でのその日暮らしに甘んじていた男に誇りを取り戻させ、一方は男を助けるため全身火傷を負った自分の世話から男を解放する。…命をかけて。どちらもいい女である。この女たちの後押しがあって、男たちは誇りをかけた最後の殴りこみに臨むのだ!

 日本が誇る名曲「スキヤキ(「上を向いて歩こう♪」の歌詞はいまいち好きになれないんですが…)」のメロディが涙を誘ったり、いささかくさすぎるかもしれない。前半が多少もたつきもする。でも作品が内包する熱すぎるまでの心意気は、それらを補って余りある。傑作。

ボーン・スプレマシー

 『ボーン・アイデンティティ』の続編。前作よりはるかに出来がよくてびっくり。
 今回の主人公は記憶喪失・女連れという二つのハンデを背負った前作のもどかしい活躍ぶりと大違い。劇中「彼は思いつきで行動したりしない」とあるように着々と目標に向かって行動していく様子は非常に格好よい。この手の映画(スパイもの、泥棒もの、etc)で「さすがプロ」とうならされる描写は大抵一つくらいのものであとはアクションシーンになだれこむというのがパターンだが、この作品ではプロっぽい描写が多く何度もうならされた。刃物を持った敵に雑誌を丸めて対抗するシーンからその雑誌を簡易式時限爆発装置(?)に利用してしまうシーンのつながりは感動的といってもいい。その他にも少し利口になった気にさせられるくらいプロを感じさせる小技が多い。もちろん映画的にプロっぽいのであって実際のプロがそうするのかどうかは私は知らないので何とも言えない。こうした細かい描写だけでなく大きな見所も用意してあって、クライマックスのカーチェイスはその最大のものだろう。非常に出来のよいシーンなのでテレビ画面でみても楽しめるだろうが、大画面での迫力はまた格別。普通、他の車にぶつからないようにカーチェイスするものだが、この映画はぶつかることが当たり前。ぶつかることで態勢を立て直したりしてるくらいだ。
 そんなこんなで全編にわたり一歩踏み込んだ描写へのこだわりが感じられる。ハリウッドの底力とでもいうべきか。近年のアクション映画の中でも上出来の部類だろう。

 後半の凝り方はなかなか。
 三谷ドラマへの西村雅彦の本格復帰、花田をはじめとする不要キャラの排除(個人的には西園寺も余計な気がする。向島は出番も少ないし第二夜への伏線なので可)、一応コロンボ式(殺人犯がドラマの最初に明かされる)をとりつつほとんど反則技で意外な結末にもっていくあたりなど、前回の「VS松本幸四郎」に比べ遥かに出来がよい。
 前半は少々かったるく今回もだめかなぁと思わせたが、古畑と今泉コンビの掛け合いでなんとかもたせて、後半へ。あとはけっこうぐいぐいみせる。力入ってるなぁ。しっかり充電しただけある。
 田村正和も一時期老けた印象があったが、今回はなかなか元気。

 ドラマそのものとしての質の高さは『相棒』に水をあけられた感もあるけど、キャラの面白さでは負けてない。残り2話にも期待だ!

チーム★アメリカ ワールドポリス スペシャル・コレクターズ・エディション

 今年最初に観る映画に相応しい作品!初笑いも果たした。
 なんかいい一年になるような気がする。
 ポール・ヴァーホーベンとは違った意味で徹底的に下品なのだが、これくらいやってくれればこれもまた爽快。人形でやってるからバカバカしさが際立つが、もし部分的な変更を施して普通に実写で撮影されていればハリウッド大作映画として観られる映画になっていそうなのがすごい。
 正義の名のもと破壊活動を行うアメリカおよびそれを更に誇張したハリウッド大作映画、ワイヤーに吊られてる人形とさほど変わらない白人カンフー映画、おバカなアクション映画で稼いでいるくせに政治的な活動して平和を叫ぶ俳優たちなどを悪意をもって皮肉っており、なかなか毒が効いている。
 素晴らしいのは音楽。「Freedom Isn't Free」や「Only a Woman」など普通に聴けるメロディに一理あるひねった歌詞がかぶさる歌ものもいいし、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズのいつもと変わらない燃えるスコアもよい。思わずサントラが欲しくなってしまった。買っちゃおうかなぁ。一理あると言えば、3種類の人間で世の中を語る演説も喩えは下品極まりないが、なるほどという感じ。くだらないことに本気出してるなぁ。感動。
 下手に途中から「意外にまじめ」になることもなく、最後までバカバカしく突っ張ってみせた根性もいい。普通こんなんでいいのかという製作者の迷いが後半になって出てきて結局「いい話」になってしまうのが多いのだが、この映画にはそれがない。ちゃんとした主張があるからこそブレないし、ここまで徹底的にできるのだろう。廉価版でDVDが出たら買おう。今、買っても特典映像にノーカットのベッドシーンはないしね、笑。

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