輸入DVDで観賞。劇場にも観にいきたいのだけれど…。

 一言で言ってしまえば「よくもわるくも普通に楽しめる映画」になっている。
 この時期、ジャッキー・チェン、ドニー・イエン、リー・リンチェイ(好きな順、笑)の香港アクションスターの新作が並んでいるが、それぞれに趣向が違っていて面白いのだが、中ではこの作品が「香港のカンフー映画」という一般的なイメージに近いのではないかなと思う。
 映画の内容は霍元甲という実在の人物の生涯を描いたもので、まるっきり史実というわけではないのだが、史実をうまくアレンジしてメッセージ性を込めている。
 念のため一般的な認識としての彼の生涯をまとめると以下のようになる。知らない人は映画のネタバレになってしまうので以下は要注意、笑。

 1857年or1967年(まあ半分伝説ですから…説によって10年も差があるのは仕方ないのか)、霍恩第の子として生まれる。幼少期は病弱だったが迷踪拳の七代目継承者であり、白蓮教の首領を倒し彼らからキリスト教徒を守ったということで武勇が広まる。1909年、西洋人オウビーンとの対決のため上海を訪れた元甲だったが、オウビーンは逃亡、代わりに武術家たちと対決。「静安寺路の擂台」の決闘と呼ばれるこの決闘に勝利を収め、「黄面虎(幼少期から患っていた喀血病のため顔が黄色が悪かったためこう呼ばれたらしい)」霍元甲の名は更に高まる。同年、上海精武体育会を設立。「智育・徳育・体育」をもって三宗と為し、活動。1910年、日本人武術家との他流試合。喀血病の悪化をおして試合をし勝利をおさめるものの、試合後病状が急激に悪化し死亡する。精武体育会はいまもなお存続し、彼の意思を世界に広めている。(*参考文献『ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!』洋泉社)

 あまりにも有名な『ドラゴン 怒りの鉄拳』は霍元甲の死からはじまり、それが日本人による毒殺ということでブルース・リー演じる架空の弟子・陳真が怒るという話。いつのころからか霍元甲は日本人により毒殺されたというもとは小説で書かれた説がまかり通っている。で、『スピリット』はこのあたりをうま~くアレンジしてみせてくれて、ストーリーとしては盛り上がるのだが、アクションとしては一番見ごたえがあるべきラストの対決がその設定のせいでいまいち、という残念なことになっている。でもこう来るか、という意外性があって、まあ面白かった。『怒りの鉄拳』ネタだと、途中で「東亜病夫」という言葉が出てくるのはちょっとニヤっとさせられたけど、史実として当時ああいう言葉を使ってたのかな?
 映画としてはアクション満載でテンポよく話のすすむ、なかなか出来のよい部類に入ると思う。アクション面では名勝負といえるものがないし、せっかくのアクションに下手な加工を施してしまっているのが残念だが、リンチェイの動きの美しさは充分楽しめる。武術指導のユエン・ウーピンは『カンフーハッスル』でも思ったが足元の動きをみせるのが最近のお気に入りなのか足さばきがけっこう印象的。話的にはもう少し盛り上げられた感じがするが、だらだら長いよりはいいといったところか。人間性と取り戻すあたりとその後の活動をもっとじっくり描いてほしかったが…。人間性を取り戻すくだりの四季の移り変わりを一気にみせるのは『少林寺』っぽくてこれもニヤリ。
 不満点は多いが、悪くない。中村獅童も出ててミーハー的にも楽しめるだろうし、観た後語る話題にもことかかない。デートなんかにはもってこいじゃないだろうか?(いや、責任はとりません。) 日本公開版は主題歌が差し替えられているらしく日本の配給会社には「お前は日本人の恥だ!」と言いたい、笑。映画館では基本的にエンドクレジットが終わるまでいるのだが、この映画は途中で帰ろうかな…。

 この映画をみたあとは『怒りの鉄拳』をリンチェイ主演でリメイクした『フィスト・オブ・レジェンド』あたりを観るととても不思議な感じを得られると思う。でも復讐する陳真ってこの映画の内容考えると不肖の弟子だよなぁ…笑。

(4月15日追記)
 数日前に劇場に行きました。日本版主題歌「罪」はまあ悪い曲ではないけれど、別に何度もききたいという感じもしない。ジェイ・チョウの主題歌も特に好きなわけでもないんだけど、やっぱり歌詞といい太鼓の音といい本編とのつながりは感じる。主題歌替えて誰か得するのかな?『トム・ヤム・クン』の東京スカパラによる日本版テーマもやめてほしいんだけど・・・。
 映画そのものの印象はDVDでの観賞時と変わらず。メッセージは理解できるんだけど、泣けない・・・。もう一歩。