キサラギ オリジナル・サウンド・トラック
キサラギ オリジナル・サウンド・トラック


 互いの顔も名前も知らない喪服姿の男たちがある目的のために集まる・・・という設定は『レザボア・ドッグス』を思わせる。が、『レザボア~』の喪服はそもそも『男たちの挽歌Ⅱ』ラストの殴り込みシーンへのオマージュでしょう。ということはこの作品も香港ノワールの血筋を・・・・・・なんてことはまったくない!けど一周忌をむかえたブレイクすることのなかったグラビアアイドル(劇中の言葉を借りるならD級アイドル)を偲ぶ会に集まるネットで知り合ったという、ある意味男らしい男たちの物語、笑。

 これがなかなか面白い。脚本は悪名高い『ALWAYS』(未見)の古沢良太だが、今回はセリフ中心で話が進行していくということもあり、説明が多すぎと感じることもなく非常に楽しめた(ラストでちょっとくどいと感じる部分はあったが・・・)。ちょっと気になって調べてみたら『相棒』第5シーズンのあのお正月スペシャル「バベルの塔」の脚本も書いてるんですね~。すごい才能だ。『ALWAYS』はわかりやすく、とかそういう注文だったのかな。
 なんとなく三谷幸喜の得意としそうなシチュエーションだが、比較的物語が転がり始めるまでが短い。三谷幸喜だと伏線を張り巡らせるまでに下手したら体感で6割くらいの時間を費やすので、一旦回収し始めると面白いのだけどそれまでがけっこう退屈だったりする。その点本作は伏線を回収しながら新たな伏線をばら撒き、更にそれを回収していく。この連鎖する快感はなかなか味わえない。

 この脚本、もとは舞台用だったらしいけど映画だからと無理に映画的な演出をしなかったのもよかった。回想シーンでは『立喰師列伝』で使われたスーパーライヴメーションっぽい表現手法が使われているが、違和感は感じなかった。
 音楽はこれまた『ALWAYS』の・・・というより『ローレライ』『海猿』などでハンス・ジマー的な音楽をつけていた佐藤直紀。今回はオケ+打ち込みで盛り上げる手法ではなく、軽い感じ。映画にぴったりでなかなかよい。
 役者たちもそれぞれにはまっているが、いつの間にか渋い役者さんになってるユースケ・サンタマリアにはびっくり。彼の役名(ハンドル・ネームだけど)でのくすぐりは面白いのだけれど、しつこすぎたかな。あとは香川照之がしっかり締める。

 ただ最後の最後、大人の事情なのかもしれないけれど演出的に残念な部分も。如月ミキは『ケイゾク』での雅ちゃんのような扱いで済ませた方が絶対オシャレ!というか、あれは清純派なのですか!?笑