この時期、香港映画界に衝撃を与えた映画が2本ある。
1本はタイの『マッハ!!!!!!!』。CGで誰でも達人にみせることができる、という状況にあえて挑んだこの作品にアクションの本場・香港のスターたちはおそらく対抗心を燃やしたはず。
そしてもう1本は香港映画『インファナル・アフェア』。韓国映画に押され気味だった香港映画界が放った大傑作。その重厚かつ骨太な作風は当時「香港映画らしくない」とさえ言われたが、これがいかに特徴的だったかはパクるものがなくややなりを潜めていた歩く香港(by『香港電影城』)バリー・ウォンが久々に活性化し、パロディ『インファナル・アンフェア』やその他多くの「似たような」作品を作ったことでもわかる。
そしてこの2本を咀嚼し自分のスタイルに組み込んだのが、ドニー・イェンの『SPL 狼よ静かに死ね』であり、本作・ジャッキー・チェンの『香港国際警察』と言えるだろう。
今回ジャッキーはトニー・チャーに刺激されたのだろう、久々に過激なアクションシーンのつるべ打ち。アンディ・オンとのヒジ・ヒザありの対決シーンをはじめとした格闘シーンだけでなく、トニー・チャーにはまだまだできない、しっかり予算をかけた危険なスタントシーンもてんこ盛り。若手にもかなり無茶をさせているが御大ジャッキーが自らここまでやってればみんな付き合うしかないでしょう、笑。
そして後半手綱が若干ゆるむものの相当にシリアスな内容。もちろん今までも『ドラゴン特攻隊』とか『新ポリスストーリー』とかジャッキー映画でもシリアスな内容のものがなかったわけではない。でも今回はそれらとは比べ物にならないくらい過酷な状況がジャッキーを待ち受けている。いつものマギー・チャンとのおままごとのような恋愛模様ではなく、恋愛がきっちり描かれているのも新鮮。燃えどころと泣きどころの多い作品だが、最後の最後まできっちり落とし前をつけてくれる脚本の丁寧さは『インファナル・アフェア』以降の作品という感じ。
これらの要素がすべていい方向に働いた結果、出来上がった本作。これぞ大傑作!
ハリウッドで生ぬるい映画(あれはあれで無理しないジャッキーに安堵をおぼえていたのだが・・・私はあれもあり派)に出て一部の熱烈なファンを落胆させていた状況から本作での復活は、ほぼそのまま映画の内容にシンクロ。ニコラス・ツェーが「ぼくのヒーローだ」とジャッキーを称えるシーンが何度かあるが、あれはファンの心の声とも言える。久々の香港映画、自分が育てた若手たちのバックアップを得て、老いや弱ささえも魅力に変えてみせたジャッキー・チェンはやはり偉大だ!
コメント
コメント一覧 (4)
長らく映画界から引退していたのに、ジャッキーに散々口説かれて7年ぶりの復帰、ジャッキー、グッジョブです(笑)
ラストの青島ジャケット、男ならこれで泣け!
グッジョブってニコラス・ツェーですか!笑
『ポリスストーリー』ではブリジット・リン、『同3』ではミシェール・キング、そして本作・・・とこのシリーズはジャッキーが女優さんを口説き落として復帰させるというパターンが定着しつつありますね、笑。女優さんたちも文芸作でなくどこからどうみても娯楽作のジャッキー作品を復帰作に選ぶあたりで好感度アップです!
青島ジャケットはトドメでしたね~!
はじめて観たときの衝撃は、忘れられません。
わたしも、★5つです♪
アンディ・オンだからこそラストの戦いで本気になるときにマスクをはずせるんですよね!これスタントマン使ってたらマスクははずせない、笑。
これ地元では上映してくれなくてDVDになるまで観ることができなかったんですよ・・・スクリーンで観たかったな・・・。
歳をとったジャッキーもいいもんだ~!と思える大傑作でした。