トンマッコルへようこそ

 「忘れられないとびっきりの笑顔に出会える」

 日本版予告編ではそう言ってて、たしかにその通りなんだけど・・・なんというか・・・いや、たしかにとびっきりの笑顔でしたよ。忘れられませんね。
 「笑顔が一番つよいのです」とのコピーも素敵な、韓国映画の健在ぶりをみせつけた傑作。(といっても2005年の映画なのでちょっと前の作品だけど。)

 1950年代、銃すら知らない純朴で平和な村に南の兵士たちと北の兵士たちが迷い込む。もちろん最初は敵対する彼らだったがのんびりした村の人々に影響されしだいに心を通わせていく・・・が!

 ジブリ作品そのままの久石譲による音楽もあってファンタジックな雰囲気すら感じさせる、まるでユートピアのような村トンマッコルの描写が楽しい。こんな村に住んでみたいな、と素直に思わされる。
 で、そこに迷い込む戦争という現実を背負った兵士たち。彼らがしだいにトンマッコルになじんでいく描写が「あ~、いいな~♪」というものなので、この村そのものが戦争に巻き込まれようというときの彼らの決断はもう泣くしかない。戦争の描写が『プライベート・ライアン』以降のリアル路線で、村での平和な生活とはっきりとメリハリをつけているのもいい。

 役者さんでは北の兵士たちのリーダーを演じるチョン・ジェヨンが『シルミド』の第一班長からさらに磨きがかかった男ぶりで格好いい。トンマッコルを象徴するかのようなちょっと頭の弱いヒロインを演じるカン・ヘジョンも文句なしにかわいい。もちろん他の出演者もみんな素晴らしい!

 同一民族が北と南に分かれて敵対している韓国ならではの題材をスパイスにした見事な脚本、嫌味にならない程度の強引さでぐいぐいひっぱる演出、素晴らしい役者、それをサポートする音楽、etc・・・すべての要素がものの見事にうまくいっている。これが韓国映画の円熟ぶりか。たまにこういうのが出てくるのがやはり素晴らしい。

 ま、なにはともあれ、いつでも笑顔でいたいものです・・・って場合によっては笑顔だと怖かったり?笑