久々に最初から最後までニコニコしながら楽しめる映画ですよ、これは。
 ジャッキーやリンチェイの映画を観た小学生の妄想をそのまま映像化してしまったような作品。それも必要充分な予算をかけて安っぽさは微塵もなし。ジャッキーの「あんまり大きな期待をしないでほしい」宣言もあって、正直なところそれほど期待はしていなかったのだけど、映画がはじまるやいなやこみあげる楽しさ!終始ダレることもなく、2大スターに対してはもちろんカンフー映画および「カンフー」そのものへのリスペクトもばっちり。ハリウッド映画で格闘技術という狭い意味ではなく本来の意味で「カンフー」という言葉が使われるというのは喜ばしい限り。

 2大スターの競演ということが話題として先行しているが、全体として非常によく出来たファンタジー。
 ファンタジー映画は作られすぎて今ではストレートな楽しいファンタジーはめったに観なくなった。哲学的な含みのある長大な原作をたっぷり予算をかけて映像化した作品はきっとシリアスだし、わりと素直だった『スターダスト』にしても根底にファンタジーらしさってこういうものでしょ?というちょっとひねくれた気分がありそう。あとは『パンズ・ラビリンス』や『ローズ・イン・タイドランド』のようなダーク系。
 そんなところで出てきた本作。ストーリー展開は異世界に迷い込んだ主人公が「お家に帰りたい」と言いながら仲間と一緒に旅をして悪ものを倒したりするという「オズの魔法使い」。(「オズの魔法使い」+カンフーでは『ケンタッキー・フライド・ムービー』の後半がありますねぇ、そういえば、笑) そんな典型的ファンタジーの「魔法」の代わりに「カンフー」をもってきた発想が単純なようで素晴らしい!

 主人公はカンフーオタクの少年。昔の自分をみているような微笑ましい気分になれる。で、あっという間にファンタジーワールドでの話に。基本が「カンフー好きの小学生の妄想」なので、カンフー習って強くなったり、男3人の旅は厳しいからか同行する美少女がいたりもする。でも師匠より強くなったりしないし、美少女ともお話するのがやっと。このへん同じカンフー好きの妄想具現化映画ではあっても「ドラゴンになりたい欲」が肥大化して最強の力も愛も手に入れて自分がナンバー1になってしまう『カンフー・ハッスル』に比べて好感がもてる(シンチーも素直ではあると思うけど)。

 アクションはワイヤーにCG使用のハリウッド流ながら映像処理に『マトリックス』の影響を感じさせない古きよきスタイル。ジャッキー&リンチェイのアクションもそれぞれの動きに目新しさはないが、2人が同じ画面にいるだけで予想以上に嬉しいし、ちょっとした構えや仕草で「達人」であることを感じさせてくれるので多少のことはどうでもよくなってしまう。アクションの量的にも満足♪ 悪役がコリン・チョウというのも実力的に考えて適役でしょう。
 ジャッキーとリンチェイが並んで笑ってるシーンはまさに眼福♪
 リンチェイの渋みの加わった表情、意外なハイテンション演技もいいが、私としてはやはりジャッキー・チェン。
 かつてユエン・シャオティエンが演じていたような「師匠」の役を楽しげに演じている。こんなに笑顔のジャッキーをみるのは久々じゃないだろうか。含蓄深いセリフも、これがまたいいんですよ~!!!年齢相当のこういう役をもっともっと観たい。

 若手女優とかカンフー映画への愛のこもりまくったオープニングタイトルとか、書きたいことは尽きない。
 何はともあれ至福の時間を過ごさせてもらった。
 観賞後3日たってからやっとエンドロールにNGシーンがなかったことに気づいた、それくらいの大満足!